遅くなりましたが、アンケートのときに皆様から頂きました質問の回答をさせていただきます。これからも、親の会事務局をとおして遠慮なく質問をお寄せください。
2007 年1 月23 日
顧問医師一同

II 型の患者様からのご質問

1.酵素補充療法について

Q)始まる時期はいつごろですか?
A)今、手続きが行われているところです。恐らく1 年後くらいに治療が受けられるようになると思います。
また、治療の必要性が高い方については、承認前でも使用できるように交渉中です。
Q)重症型、軽症型、骨髄移植を受けた人全員が受けられますか?
A)最初は、骨髄移植を受けていない人から始められると思います。次第に、受けた人もできるようになるでしょう。原則として、II 型と診断された患者様は、だれでも酵素補充療法を受けることができますが、移植の効果が良好な人は酵素補充療法をしなくてもよいかもしれません。骨髄移植の効果が出ている患者様に酵素を使った場合、際立った効果があるかどうかは分かっていません。効果は、ある程度のところで頭打ちになるかもしれません。
Q)頭には効かないのですか?
A)酵素補充療法は、頭には効きません。ですから、重症型の患者様の場合は、体の症状だけがよくなってきます。つまり、肝臓の腫れが取れたり、呼吸が楽になったりするため寿命は延びます。寝たきりの状態の期間は延びることになるでしょう。
Q)移植をしていたら、酵素の薬が拒否されることはありませんか?
A)そういうことはありません。「移植の効果」プラス「酵素の効果」が得られると推測されますが、移植の効果が良好な人は、あえて酵素補充療法をしなくてもよいと思います。
Q)数時間もかかる点滴治療がじっとしてできるか心配
A)子供さんの点滴は、動いても大丈夫のような針を使いますので、心配要りません。ただし、毎週点滴をしていると、だんだんと、その場所の血管が硬くなって点滴が難しくなることがあります。

2.骨髄移植について

Q)すべきかどうか?
A)骨髄移植は、成功すれば、酵素治療のように毎週病院に通う必要が無く、楽だと思います。しかし、危険の大きい治療法で、拒絶反応などで命を落とすこともあります。効果の程度は、恐らく酵素治療と同じくらいと思われます。骨髄移植のほうが頭への効果はあるのではないかといわれていますが、分かりません。
ですから、状態の悪い人、年齢が高い人、頭の症状が無い人には、あまりお勧めしません。
Q)効果について
A)骨髄移植が成功すれば、肝臓の腫れがとれる、関節が動きやすくなる、皮膚が柔らかくなる、舌が小さくなって呼吸が楽になる、などの効果が見られます。
しかし、脳の症状については、ましになっているのか、しても同じなのか、よく分かりません。(今回のアンケートで、少し分かりそうな気がします。結果が出れば、お知らせします。)
II 型の知能障害の患者様は、III 型の知能障害の患者様よりおとなしいといわれています。しかし、II 型の患者様は、おとなしいのではなくて、呼吸などがしんどいのでじっとしているという感じです。III 型の患者様は、体はしんどくないので、多動や衝動的行動などの頭の症状を示します。II 型の患者様が骨髄移植あるいは酵素治療を受けて体が楽になると、III型の患者様とよく似た多動や衝動的行動などの頭の症状を示すようになると考えられます。

3.イソフラボンについて

Q)II 型への効果は?
A)理論的には、II 型にも効果があります。しかし、患者様への実際の効果については、あまりデータは無いようです。

4.II 型の知能障害などの神経症状について

Q)中間型などについて
A)ムコ多糖症II 型には、ご存知のとおり、知能障害がある重症型と知能障害が無い軽症型とがあります。しかし、重症型といっても、知能障害の程度は様々です。最も重い人は、1 歳ころにすでに知能障害が明らかです。最も軽い人は、小学校に入ってから知能障害に気づかれます。平均的には、3~4 歳で知能障害に気づかれます。重症型の中で最も軽いタイプの人が中間型と呼ばれます。
重症型の中の軽いタイプ患者の様は、5 歳くらいでは、見た目では、はっきりと知能障害があるとは感じられないかもしれません。知能テストをすると、正常よりも得点が低いことが分かったりします。また、脳のMRI で兆候が出ていることもあります。
Q)視線が合わない
A)知能障害の症状が進んでくると、視線が合わないという症状が出てきます。ボーっとして、目には見えているのですが、それが何であるかを頭できちんと理解できなくなります。突然起こるのではなく、ときどき、あれっと思うことがあったりして、それが次第に頻繁になり、だんだんといつも空を見ている感じになります。
Q)乱暴な行動
A)II 型重症型の患者様で、個人差はありますが乱暴な行動が見られる時期があります。これは、脳障害のひとつの症状です。もっと障害が進んでくると、次にはおとなしくなってきます。
Q)トイレットトレーニングができない
A)これも、ムコ多糖症の脳障害の症状のひとつです。必死になってトレーニングすることがいいことかどうか、疑問です。
Q)聴力障害の対処
A)ムコ多糖症の症状のひとつとして聴力障害があります。知能の遅れのためだけでなく、聴力障害もあって言葉が覚えられないという状況が起こります。聴力障害だけでも良くしてあげることは、言葉の習得や知能のためによいことです。中耳炎を悪化させないように気をつけて、聴力検査を定期的に受けるようにして下さい。重症型の患者様でも、補聴器をつけてコミュニケーションに努力したり、楽しい音楽を聞かせてあげたりするのがよいと思います。

5.気管切開について
 病気が進んでくると、大きな舌のためや痰のために呼吸が苦しくなったり、食べ物が食べられなくなったりします。食事ができなくなると鼻から胃のなかへチュウブを入れて、流動食を与えるようにします。呼吸が苦しくなると、気管切開という方法がとられたりします。
気管切開をすると、空気が直接気管に通るようになるので、呼吸が楽になります。痰も、気管切開の穴から吸引チュウブで吸い取ります。しかし、1~3 年くらいすると、肉芽というのが気管の内部にできてきます。肉芽は、気管の中で大きく膨らんで、やがて気管の穴をふさいできます。そうなると、気管支ファイバーで覗いて焼くという操作をしなければいけません。肉芽は、焼いても焼いてもまたできてきます。最後には、どうしようもなくなってきます。ムコ多糖症の人は、普通の人よりもよけいに肉芽ができやすいです。
気管切開をしなかったとしても、舌が大きくなってくるために、やはり息が詰まってきます。どちらのほうがしんどいか、分かりません。最期は、気管切開をしたほうが大変かもしれません。しかし、したほうが一時は楽になりますし、寿命は延びるでしょう。

6.保因者診断について
 II 型の場合、患者様の姉や妹が保因者かどうかは大きな問題です。保因者は、2 人に1 人の確率です。保因者の女の子は、II 型の病気の子供を産む可能性があります。
保因者かどうかを診断するためには、まず、最初に、兄弟である患者様の遺伝子診断をしなければいけません。次に、姉や妹が同じ遺伝子の異常を持っているかどうか調べます。ですから、患者様の遺伝子診断ができなければ、保因者診断もできません。もし、遺伝子診断をしないままに、患者様が亡くなってしまったという場合には、姉や妹の保因者診断ができないのです。運良く、患者様の皮膚の培養細胞や死亡時に解剖をして患者様の臓器が保管されていたときなどには、可能です。もし、姉や妹の保因者診断を考えていらっしゃいましたら、早めに患者様の遺伝子診断をなさることをお勧めします。遺伝子診断は、採血するだけでできますが、もし患者様が骨髄移植を受けていたら、皮膚の生検をして培養細胞をつくるというようなことをしなければいけません。
遺伝子診断は、健康保険が使えませんが、検査会社などですることができます。具体的なことは、主治医の先生や親の会の顧問医師にご相談ください。また、いつ保因者診断をするか、いつ本人に告知するかも大きな問題です。結婚や妊娠についても、きちんと考えなければいけません。検査を受ける前に、代謝異常症の遺伝カウンセリングができるところでご相談されて、検査の目的や正確さなどを十分に納得してから受けてください。近くに適当な先生がいらっしゃるかなどは、顧問医師にご相談くださればご紹介します。

III 型の患者様からのご質問

1.イソフラボンについて
 イソフラボンについては、たくさんのご質問を頂きました。効果について、まだはっきりしたことがよく分からないので、顧問医師で方針を取り決めているところです。純粋な製品を取り寄せて、患者様に配布することにしたいと思っています。
確定した方針が決まり次第、親の会の事務局を通じて皆様にご連絡いたします。また、ホームページでもご連絡する予定です。いま少し、お待ちください。

2.骨髄移植について
 骨髄移植は、肝臓の腫れなど、ムコ多糖症の体の症状にはよく効きますが、頭の症状には、あまり効かないようです。III型は、体の症状が軽く頭の症状が主ですから、命がけの骨髄移植をするメリットはあまり無いと思います。

3.睡眠障害について
 睡眠障害は、III 型の脳障害が進行して次第に出てきます。最初は、夜中に目がさめてそのまま起きているということが起こり、だんだんと眠る時間が少なくなります。ある時期には、一晩中動き回って全く眠らないということも起こります。
睡眠障害の症状には、メラトニンというお薬が効きます。これは、日本では手に入りません。インターネットなどを利用して、個人輸入することができます。主治医の先生とご相談して、個人輸入されるといいでしょう。

4.神経症状について
 III 型の神経症状は、多動や衝動的行動が特徴です。周りの人は、どう接してよいか悩まれるでしょう。お薬でも、なかなかうまくいきません。多動や乱暴な行動は、病気から来るのであって、その子本来の性格ではありません。根気よく、やさしく接してあげて下さい。